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執着者

『執着者』は、櫛木理宇さんのサイコサスペンス小説です。元々は『老い蜂』というタイトルで単行本として出版されていましたが、文庫化にあたって改題されました

 

物語は、平凡な会社員のサワが、恋人の智保と同棲を始めたことをきっかけに、薄汚れた老婆につきまとわれるようになるところから始まります。

 

サワは、老婆の正体や目的が分からず、警察にも相手にされず、周囲の無関心に苦しみます。一方、荻窪署の刑事・佐坂は、姉をストーカーに殺害された過去を持ち、事件マニアとして知られています。佐坂は、略取犯と拉致された女性の捜索に乗り出しますが、その過程で、建築士が殺害され、妻が老人に略取される事件に遭遇します。

佐坂は、これらの事件に共通する意外な糸口を見つけ出し、真相に迫っていきます。しかし、事件の背景には、26年前に起きたある凶悪殺人事件が大きく関係しており、その犯人と被害者の間には、執着と復讐の連鎖が渦巻いていました。

 

 

この小説の感想は

  • ストーリー展開が巧みで、読者の興味を引きつける。登場人物や事件の関係が次第に明らかになり、最後には驚くべき結末にたどり着く。犯人の動機や心理も複雑で、一筋縄ではいかない。
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  • 老人のストーカーという設定が斬新で、不気味で怖い。老人は一般的に社会的弱者と見なされがちだが、その反面、執着心や恨みが強く、常人には理解できない行動に出ることもある。老人の犯罪に対する社会の甘さや無関心も問題提起される。
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  • 被害者遺族の悲惨なその後や、自分の感じている恐怖を人が真に受けてくれない絶望感がリアルに描かれる。被害者の立場になって考えると、胸が痛む。
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  • 佐坂や今道といった警察のキャラクターが魅力的で、頼れる存在として描かれる。佐坂は、自分の過去を乗り越えて、復讐ではなく新たな被害者を出さないように行動する姿がかっこいい。今道は、櫛木さんの他の作品にも登場する人気のキャラクターで、優しくて頭のいい刑事として活躍する。
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  • タイトルの『執着者』は、序盤はストーカー老人を連想させるが、読後には、真意が分かる。執着するのに年齢は関係ないし、何なら歳を重ねた分、思いは重なり募っていくものかもしれない。
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『執着者』は、サイコサスペンスとして優れた作品であると言えます。読者を惹きつけるストーリー展開、不気味で怖い老人のストーカー、リアルな被害者の苦悩、魅力的な警察のキャラクターなど、櫛木さんの作品の魅力が詰まっています。老人が怖くなる一冊です